ABLActivity Based Learning
2016.12.20

スカラー候補生 定例プログラム

悠久の時を駆けぬけたワッフル

ROCKET恒例プログラムに「解剖して食す」というものがある。タイトル通り、何かを解剖するのだ。初年度の2015年が軟体動物のイカ、2度目が甲殻類のカニ・エビ。それに続く3度目の正直となる今年のテーマは「小麦」だった。

「えっ、小麦?小麦って解剖するもの!?」と思われる方もいるかもしれない。それもそのはず。何故なら小麦ほどのミクロなものは解剖とは程遠い存在だからだ。現代においては自分の手で精麦して食べるなんて気の遠くなることなどなかなかできたものではない。けれどそれに果敢にチャレンジするのがROCKETだ。「自ら精麦した小麦でワッフルを作る!」というミッションを掲げ、今年度のプログラムはスタートした。

 

 

はじめに配られたのはピンセット、茶こし、一粒の小麦。まず一粒の小麦に果たしてどれほどの粉が入っているのか確認することが第一関門だ。一粒といえど、これほど小さく硬い殻から粉を取り出すのは至難の技である。取り出す方法は何だっていい。テーブルに無造作に置かれた古代の打楽器にしか見えない木の棒や石。各々それらの道具を手に取り小麦を叩いたり、すりつぶしたりして小麦に衝撃を与える。硬い殻が破れて白いサラサラとした粉が顔を覗かせる。

しかし、子どもたちが取り出した小麦一粒からの粉は0.1gにも満たなかった。ワッフルを作るためには110gの粉が必要だ。製粉するための時間と労力を考えると、精麦にかかる時間と労力を小さくする必要がある。彼らは頭と体を使いながら、文明が生まれるがごとく試行錯誤の連続を経て効率化された方法へと近づいていく。小さな小麦から一度にたくさんの量を精麦するためには、ある程度の広い面積の平面で上から重みと圧力をかけながらすり潰していくのがベストだ。必要な量を精麦するために死闘を繰り広げること3時間。彼らはやっとの思いでワッフルのための小麦を手に入れることができた。

有史以来、小麦が人の手により小麦粉にされ始めたのはおよそ5000年前、古代エジプトでのこと。それから人類は道なきところに道を作るように食べ物を安定的に確保できる技術を獲得し、蓄積してきた。スカラー候補生たちが辿ってきた小麦との格闘の時間はまさに人類が何千年という時間をかけて導き出してきた技術革新の道筋そのものだった。

 

現代社会に生きていれば便利な道具が当たり前のように日常に溢れている。どういう過程で作られたかも知らずに我々はそれらをただ使うだけになってしまった。先人たちが悠久の時間をかけて見出した最先端の技術の結晶が、私たちの周りにあることをもう一度考えなければいけない時代に生きている。今年のROCKETのテーマは「インターネットなしで生き抜け!」。PCのキーボードを叩けば瞬時に出てくる情報の嵐にのまれることなく、自分の手足や頭を使って導き出した経験こそがこれからの時代を生き抜く人間力のように思う。

 

時間と手間をかけて作ったワッフルは思いのほか、うまく焼けなかった。何故うまく焼けなかったのか、試行錯誤の果てに辿り着く味を求めてさらなるチャレンジに身を投じてほしい。

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