雪が降る街は気温が低いはず、そんなところに水温が高くないと生きられない熱帯魚が果たしているのか。生物好きの子どもたちはこの矛盾した問いへの答えを探しに九州へと赴いた。
着いた町で何の手がかりもない子どもたちは、地元のことは地元の人に聞くのが一番ということで、駅周辺で聞き取り調査を開始した。骨董屋のおばさん、駅前でイベントをしているお兄さん、商店街を歩いている人、カフェでお茶をしている若者。その中の数人の人が口々に、とある川で熱帯魚がいるのを聞いたことがあると言う。その不確かな情報を頼りに、電車を乗り継いで、熱帯魚がいそうな川やポイントを探しはじめる。
熱帯魚が生息できる温度が20度。少し冷たい気がする。どうやらここには冬、雪が積もることもあるそうで、そんな時には熱帯魚はこの川では生きられないはずだ。この川に本当に熱帯魚がいるのか。川を上流から下流までいくつもポイントを置いて、水温を測っていく。水中写真を撮って川の中の様子を調べたり、川の温度を測ったり、そこに暮らす魚たちとの関係を考察する子もいる。
ある地点を境に水温が上昇する。水温20度!熱帯魚が生きられる温度だ。もしかしたらここには熱帯魚がいるかもしれない。なんだか期待できそうな風向きになってきた。隈なく川を観察していくと、温かな温度で保たれてる一区画が現れた。
「いたーっ!!!大群がいるー!!!」
「これティラピアじゃない!?」
「グッピーもいる。このグッピーメダカと交配した種じゃないの!?」
熱帯魚を発見した子どもたちの興奮は最高潮へと達した。
でも、何故この川のこの一区画に熱帯魚はいたのか。他の場所には本当にいないのか。
毎日同じ地点で同じ時刻に計測することではじめて仮説が正しいかを検証するのが科学だ。生物学者になりたい子どもたちは、図鑑で知識をいるのではなく、現場いいってはじめて分かる事実を知って、自分の中で仮説を立てることができる。生物学者になることは、本を読むことでは分からないリアルな世界で出会う新発見に出会っていくことがより近道なのかもしれない。
知恵と体力をフルに使った、まだ肌寒い春の冒険の先で、これまで知らなかった川の秘密が子ども達の前に広がりはじめる。