TTTop Runner Talk
2015.06.04

スカラー候補生 定例プログラム

鳶 上空数百メートルを駆ける職人のひみつ
多胡弘明(鳶職人)

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6月4日、5日に開催されたROCKETのトップランナー講義は、鳶の親方でもあり、自身が鳶職人としてスカイツリー建設に携わった多湖 弘明 氏による「鳶 上空数百メートルを駆ける職人のひみつ」。多湖氏は親方といっても30代。20代後半に「スカイツリーを建てたい」と大阪から上京し、10年後、その夢を見事に叶えました。そして、一人でも多くの人に鳶という仕事を知ってもらいたいという志のもと、著書の出版や写真展の開催、メディア出演など精力的に活躍されています。

 

多湖氏はスカイツリー建築を例に、鳶の仕事について説明されました。工事現場では日々、想定外のことが起こります。例えば、鉄は溶接により伸びるため図面通りにはならず、現場で数ミリ単位の調整が必要になるのは常。それを一つ一つ鳶職人が調整していく。それに、悪天候でも仕事を止めるわけにはいきません。雨や雪でもカッパを着て動き回り、強風でも風を計算してクレーンを動かす。スカイツリーでは、634mの上空、40m/sの風が吹きつけ、マイナス40度の体感温度の中で、鳶の仲間たちと手で雪かきをした経験も。「上までスコップを持って上がるわけにはいかないですからね。手ですよ、手!」と多湖氏は笑いました。

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スカラー候補生からは「高いところで怖くないんですか?」「体力的にぼくには無理だ」などの声が。

 

多湖氏は続けます。「鳶は、困難な問題をどのように解決するか、その場その場で臨機応変に考える力こそが技なんですよ。クレーンがあっても操作するのは人。そういう意味で、職人の技術は科学技術を凌駕する。」

 

「確かに、今はロボットは指示通りにしか動かないけど、職人の方が臨機応変に対応できる」「職人が存在する限り、安泰なんじゃないかな」とはスカラー候補生。

 

そして、多湖氏は「大型バイクは新幹線に勝てるのか?」と話を始めました。

 

すると、そこにスカラー候補生が「バイクで新幹線に勝つなんて無理でしょ」と言って、もちまえの知識を語りました。そのとき、多湖氏の大阪なまりが強くなり、空気が一変。

 

プロの腕があれば勝てるんですよ。要は腕次第。

 

確かに知識はあるに越したことはない。けどね、世の中は知らんことで埋まっている。鳶職についても知らんかったでしょ。知らんことに気づかんかったんですよ。知らんかったから。一番危険なのは、話を聞いて知った気になること。

 

ワイヤーの太さによって、クレーンで釣れる重量は決まっている。でも、その数字を知っていても、ワイヤーが切れる時は切れるんですよ。その危険を何で判断するかというと、目や耳。ワイヤーを叩いてみたときの音や、ワイヤーの角度や滲み出る油の量を確認する。自分たちはかつて、実際にどれだけの重量まで耐えられるのか、様々な状況で試して、体感を磨いた。

 

知識と経験が両方あってこそ、直感が生きてくる。だから、自分で飛び込んで行って、体験することが大事なんですよ。とにかく自分で決めること、人のせいにするな。どうせ、と考えていても損なだけです。自分で選んで失敗してもいいやん。失敗しても糧にしていけば。

 

「自分は知識ばっかで薄っぺらかも」とスカラー候補生がつぶやきました。「失敗したい!失敗できる実験がしたい!」と他のスカラー候補生が声をあげました。法律、学校、親や大人からの制限を理由にして、やりたいことに飛び込めずにいるのは自分自身だということに気づいた様子です。

 

「出る杭は打たれるけど、出すぎた杭は打たれへんのやから、とことんやったらええ。」

 

スカラー候補生たちが多湖氏のメッセージをしっかりと受け取り、「出すぎた杭」になれたとき、未来のスカイツリーが建てられるのかもしれません。

 

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