TTTop Runner Talk
2015.07.22

スカラー候補生 定例プログラム

未来を生きる人間の可能性
遠藤 謙(エンジニア)

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7月22日、23日に開催されたROCKETのトップランナー講義は、遠藤 謙 氏による「未来を生きる人間の可能性」。遠藤氏は日本人の身体に合う、軽量で小型なロボット義足を開発しているエンジニアであり、その活躍はメディアなどでも盛んに取り上げられています。

 

講義前、スカラー候補生からは「途上国の義足の支援について聞きたいです!」と声が挙がりました。事前に遠藤氏のことを調べてきて、講義が始まるのが待ちきれない様子です。

 

遠藤氏は「僕はエンジニアです」と笑顔で話を始めました。「エンジニアって何をしている人かわかる?」という遠藤氏の問いかけに対し、「ものを作っている人?」「研究者は理論を作っている人で、エンジニアは実際のものを作っている人かな」など、スカラー候補生たちが返答します。遠藤氏は続けます。「『こんなものがあったらいいな』を『じゃあ作ってみようか』と形にするのがエンジニア。僕は研究もしているけど、ちゃんとものを作りたいと思っているので、自分はエンジニアと言っています。」

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「で、何を作っているかというと、義足。友人が骨肉腫という癌で足を失った時に、義足は30年くらい前から変わっていないことを知り、そろそろ進化しなくてはいけない、まだ世の中に無いものを作りたいと思った。」と義足開発に携わることになった経緯を語りました。そして、MITメディア・ラボのヒュー・ハー教授の元へ留学。ハー教授は自分の足を自分で作ろうとロボット義足を開発し始めた方です。そして、帰国後の今も、「世の中には身体に障害をもっている人はいない。ただ、テクノロジーの方に障害がある。」というハー教授の言葉が遠藤氏の原動力となって、義足の研究・開発に取り組んでいるそうです。

 

スカラー候補生から、「それなら、再生医療で足を再生すればいいんじゃないですか?」と声が挙がりました。

 

「再生医療は元通りの足に戻りたい人には素晴らしい技術だと思う。でも、めちゃくちゃ早く走りたいという人もいるかもしれない。そういうときに、別の足をつけることで人間の可能性を超えることができる。ぼくはそれがとても面白いと思う。」そして遠藤氏はロボット義足の研究や開発について説明をしました。

 

「ところで、世界で唯一販売されているロボット義足はいくらだと思う?」という遠藤氏からの問いかけに、スカラー候補生たちは「一億円!」「500万円!」「二千万円!」などと口々に答えます。答えは、一千万円。「そんな、とても買えないよー」とスカラー候補生からため息が聞こえます。

 

「そう。世界では、足を失った人の半分以上はお金がない。」

 

そして、インドを中心とした途上国への義足支援について遠藤氏は話し始めました。インドでは、10歳の女の子に3,000円位で義足を作ってほしい、という依頼があった。苦労しながら義足を作り、その女の子は生まれて初めて歩くことができた。「歩けるって実は幸せなこと。」と、今も支援団体と共に、義足を提供する支援を継続しているそうです。

 

「障害者ってかわいそうだと思う?」

 

遠藤氏の質問に、「かわいそうだと思う」とスカラー候補生。

 

「僕も正直、少しかわいそうだと思う。だけど、」と遠藤氏は続けました。

 

パラリンピックの100m走の記録はどんどん伸びていて、健常者とほとんど変わらないタイムで走れる人が出てきている。もしかしたら、近い未来にパラリンピックの方がオリンピックのタイムより早くなるかもしれない。僕は本気でそう思っている。実際、次のリオのオリンピックでは、走り幅跳びで金メダルを取る人は障害者かもしれないところまできている。

 

だから、2020年の東京パラリンピックに向けて、ものすごく早く走るアスリートを育てたいと思って競技用義足を開発している。種目は100m走。そこで、選手が健常者よりも早いタイムで走ることができたら障害者への世間の見方が変わるでしょう。競技用義足というテクノロジーによって、障害者を「かわいそう」と思わない社会がくるかもしれない。僕はそれにとてもワクワクする。

 

遠藤氏の言葉に、必死で拍手をするスカラー候補生がいます。「すげー!」と目を見開いて周りの子ども達の顔を見回すスカラー候補生も。

 

障害者と健常者の境界線は実は曖昧なもの。遠藤氏はエンジニアとしてその境界線を行き来できるテクノロジーを開発し、義足によって障害者の色合いを薄くしていきたい、と語りました。

 

僕はパラリンピックに向けて競技用義足を作る。だけど、大事なことは、その技術を打ち上げ花火で終わらすのではなく、2020年以降にどんな社会になるのか考え、使った人が幸せになるものを残したい。エンジニアは作ったものの先にいる人々の幸せを作らなくてはいけないと思う。

 

遠藤氏の講演が終わって、スカラー候補生からは義足をどのように開発してきたか、インドの支援の実際や課題、ロボットとの共存社会についてなど、質問が次々と溢れ出てきました。その様子は、スカラー候補生たちが遠藤氏のワクワクに感染したかのようでした。遠藤氏の仕事に対する姿勢や「エンジニアとは」という熱い思いに、スカラー候補生たちは大いに触発されたのではないでしょうか。

 

 

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