TTTop Runner Talk
2015.08.27

スカラー候補生 定例プログラム

仕事と遊び、リアルとバーチャル
猪子寿之(チームラボ代表)

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8月26日、27日に開催されたROCKETのトップランナー講義は、猪子 寿之氏による「仕事と遊び、リアルとバーチャル」。猪子氏はTeamLab(チームラボ)の代表であり、テクノロジーとデザインを融合させたアート、遊園地などのアトラクション、ソフトウェア、ウェブ、映像などの作品を次々と生み出し、その作品は国内外で高く評価されています。

 

猪子氏はチームラボを「会社でもあり、チームラボ自体がアーティストでもあるのね」と説明します。

 

チームラボのアートやイベント作品は、 床や壁一面にデジタル映像が映し出され、鑑賞者が映像に触れることで映像が変化していくなど、鑑賞者が作品の一部になってしまう楽しみがあります。例えば、お絵かき水族館というイベントでは、大きな壁面いっぱいに様々な魚が泳いでいる水族館が映し出されていますが、子どもなどの参加者が紙に描いた魚が、なんとその水族館で泳ぎ出すのです。子ども達は自分の描いた魚が泳いでいるのを指差して歓声を上げ、魚を触るとまた動くのがうれしくて遊び続けます。

 

スカラー候補生から「未来館のイベントに行きました!」などの声も。猪子氏はすかさず「えらいねー」と返して笑いました。

 

猪子氏はスカラー候補生に動画を見せながらチームラボの作品を紹介し、その元となる考え方を語りました。

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デジタルの反対語は自然みたいなイメージだけど、俺はそうは思っていなくて。人間が作る人工物は物質に頼っていたんだけど、物質こそが自然の反対語じゃないかと思う。デジタルっていうのはもっと自然と寄り添えると思っている。なぜなら物質ではないから。だから、自然そのものをデジタル化することでアートになるんじゃないか、と思っている。

 

作品映像を観ていたスカラー候補生から「作品に光を使っていることが多いですが、どうして光なんですか?」と質問が出ました。

 

猪子氏は、「今まで文章を書くとか絵を描く場合、紙にくっつけないと存在出来なかった。でもデジタルは物がなくても言葉や絵がそのまま存在できる。人間が考えたことを概念のまま存在させることができる。最後のアウトプットに僕らは光を使うことが多いけど、その理由は、光だとどんどん動かして変化していけるからね」と返答しました。

 

「アイディアはどうやって生まれるんですか?」すかさず、他のスカラー候補生からも質問が。猪子氏は「デジタルはどう表現を変えることができるのかを模索していく中で、だんだんと積み上がっていくもんなんだよね。君たちくらいの年代の時には全然何も思いつかなかったよ。実際にやっていくことや実験することで発見して積み上がっていく。突然、思いつくっていうのは嘘だと思うよ。もちろん『アイディアがふってきた』って言えば周りの人が喜ぶから、俺も時々嘘つくけど」と会場は笑いの渦に。

 

「どうしてチームラボは大きくなったんですか?」スカラー候補生から、違う視点の質問が出てきました。猪子氏はえーっとね、と間を置いてから、話し始めました。

 

新しい分野だから、先輩がいないから大きな仕事が受けられる。その分野が伸びると、必然的に需要ができる。もしくは、自ら需要、つまりは新しいマーケットを作れる。その作品を他に作っている人がいなくて、世界で100人に1人でも「油絵よりも動く絵の方が面白い」と思ってくれれば、アートになるし、仕事になる。大きな世界を相手にしているから、会社が大きくなった。自分は徳島っていう田舎だったんだけど、そこで仕事してたら、みんなの支持を得なければっていう仕事をしていたかもしれない。でも、世界を相手に仕事したら、少数でも強い支持が得られればいい。

 

そして、スカラー候補生が「チームラボを始めるきっかけは何だったんですか?」と手を挙げました。

 

インターネットが出てきて、どうも新しい社会が始まりそうだと思った。だからこそ、デジタルやネットワークでできることを模索したかった。一方で、シリコンバレーですごい会社がどんどん出てくるし、世界がつながっていくとか、そういうのはシリコンバレーの人がやるから自分のやることじゃないなと。

 

一方でアートが好きだったから、デジタルが人間の表現を変えるんじゃないかと思った。当時、デジタルでアートをやっている人はほとんどいないから、一流っぽく見えるでしょ(笑)。新しい世界にはプロがいないし、しょぼいっていうのもわからない。それで、デジタルの世界にかけることにした。

 

そして、猪子氏は「すごいしょーもない話なんだけど」と照れ笑いを浮かべながら、話を続けました。

 

自分の人生を振り返って、何が一番楽しかったのかなと考えたときに、高校の時に友達とお化け屋敷をやったことを思い出した。ややこしい年代の男子の高校生でも怖いようなお化け屋敷を作ろう!と友達と考えて。結果的に、すごいウケた。自分一人じゃできないことも色んな人のアイディアで作ることができたし、作りながら新しい方法を見つけたりして、それが非常に楽しかった。できればそういうことを仕事にしたいと思った。仲間と手を動かしながら考えて作る。作ったもので人々が感動したりびっくりしてもらえればいいなと。

 

あと、もう一つ理由がある。自分は一人でちゃんとできない。時間も守れないし、メールも面倒であんまり読めない。電話かかってきても出たくない。一人で社会に出てくのは無理だな、と感じていた。だから、仲間とチームとしてやっていければ、社会とうまく接点が取れるかなと思った。

 

チームの方が楽チンなんだよね、実は。欠点を欠点のまま生きていける。人間として完成度が低いまま生きられる。

 

競争力のない新たな分野で、チームで共創する。猪子氏の生き方や作品は、スカラー候補生たちの「こうでなければいけない」という固定観念を緩ませて、驚きやワクワクを届けてくれたようでした。

 

 

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