TTTop Runner Talk
2016.01.20

スカラー候補生 定例プログラム

創造と感性
六角鬼丈(建築家)

Pocket

2016年1月20日のトップランナー講義は建築家の六角鬼丈 氏。東京武道館の建築で有名な大御所です。

 

六角氏は「文化を作っている」と自己紹介し、「この二つは僕の中でも特徴のある建築」と、東京武道館や感覚ミュージアムについて、そのコンセプトや建築に至った経緯などをお話されました。そのなかには、完成してからの苦労話も。

 

例えば、東京武道館はひし形をモチーフに設計。表に見える形だけではなく、隅々や小窓にもひし形が現れています。そのため、凸凹が多いので、吸音設計ができているというメリットがあります。しかし一方で、雨漏りしやすい構造のため、完成後3年くらいは雨漏りしたそうです。その度にスタッフが駆けつけて対処し、排水構造を工夫してこられたとか。

 

また、東京武道館では「武道は芸術の一つ」というコンセプトであちらこちらに芸術作品が展示されています。さらに、設計時には敷地内で火を焚く構想がありましたが、経済的な視点から実現は叶わなかったそうです。そこでスカラーから「芸術作品なのに経済を理由に制限を受けてできなかったのは納得されたんですか?」と質問が挙がりました。

%e5%85%ad%e8%a7%92%e3%81%95%e3%82%93-still001-768x432

「納得はしていません。でもね、武道は芸術だって言ったのは私だけなんだよ。当時の審査員たちはとても評価してくれたんだけど、審査をした人と管理をする人は別。つまり、時代は変わっていくということ。経済性が問題になってくると、まず贅沢品、『なくてもいいじゃない』っていうものは外される。そこで難しいのは芸術や美学っていうのを外させないことで、建築家の戦いともいえる。でも、その頃にはこっち(建築家)が首を切られているかもしれないんだよ(笑)。難しいところだよね。それは日本自身の体質だと思う。」

 

そして、次々とスカラー候補生から質問が出てきました。例えば…

 

「独創的なところはどこから湧いてくるんですか?」

 

「多分、普段から色々なところに興味をもっていて、そういった興味が仕事に出会ったときに独創性が重なって出てくる。だから、日頃から自分が何に興味をもっていて、何を学んでいるのかというのはとても重要。必ずしも全部が役に立つとは限らない。100個の内、1個か2個、役に立ってくれればいいほうだよね。」

 

「建築物を作るときに一番大切にしていることはなんですか?」

 

「厳しい質問だな。作品の中に魂を入れられるかどうかだよね。仕事の中には、魂の入らない仕事もあるんだ。できるだけ避けたいんだけどね。」

 

六角氏は一息ついて、話を続けました。

 

あと、建築一個作るのに、東京武道館はコンペやってから、アイディアと設計に約2年間、工事に2年間。約4年間かかっている。感覚ミュージアムは、「こういうものを作りませんか?」と言って、スタートするまで5年間。仕事になって実際に作り始めてから5年間。あわせて10年くらいかかっている。ちっぽけなのに10年。

 

住宅1軒だって、長いのは1年、2年かかるよ。住宅産業の会社から言わせれば、1年もあれば何百軒も建っちゃう訳で、その違いがどこか説明するとね、大変だ。やっぱり建築やってよ(笑)建築をやればわかってくるよ(笑)。

 

六角氏の笑顔に、スカラー候補生から笑い声が溢れました。

 

最後に、六角氏の講義を受けて、中邑ディレクターからスカラー候補生へ以下のようなメッセージが伝えられました。

 

ここにいるみんなは物作りをしている。では、みんながやっていることと、六角先生のやっている物作りとなにが違うのか、考えて欲しいと思う。

 

六角先生は建築家であり、プロデューサーでもある。こんな大きなものを作るときに、ものすごい時間とエネルギーと、やっぱり人を動かす力が必要だと感じてもらいたい。今、みんなには好きなことをやっていい、と言っている。挨拶もしなくていい、何をやってもいい、自由にやっていい。でも、勝手にやるなら、自分で何か一つ身につけること。その後、それを見せながら人とコミュニケーションをとることを考えていかないと、大きなものは作れないし、世の中は動かせない。

 

その道に乗るかどうかは君たちの自由だけど、ROCKETでは、多くの子供達がそういう風に歩んでもらえる道を作りたいと思っている。

 

六角氏や中邑ディレクターの話を聴いて、スカラー候補生たちはどのような選択をしていくのでしょうか。スカラーやスカラー候補生たちが歩む道を、楽しみに見ていきたいと思っています。

 

 

関連するプログラム