TTTop Runner Talk
2016.04.12

スカラー候補生 定例プログラム

僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。
出雲充(起業家)

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2016年4月12日のトップランナー講義は、出雲 充 氏の「ミドリムシが地球を救う」。出雲氏はミドリムシの屋外大量培養技術を世界で初めて確立した東大発のバイオベンチャー、株式会社ユーグレナの代表取締役社長です。

 

ミドリムシ(学名:ユーグレナ)は0.05mmの藻の一種。ミドリムシは植物としては海藻の仲間ですが、動物性のタンパク質も入っているため、植物と動物の特徴を併せもっています。また、人間が生活する上で必要な50種類を超える栄養素を生み出すことができるそうなのです。光合成により二酸化炭素を吸収し、しかも「バイオ燃料」のもとになる油脂を取り出すこともできます。

 

出雲氏はミドリムシについて説明した後、ミドリムシとの出合いについて話し始めました。

 

「僕は大学一年生の夏休みにこの国旗の国に行きました。どこだと思う?」

 

何人ものスカラー候補生が口々に「バングラデシュ!」と答えます。

 

「そう、いきなり正解だね(笑)。バングラデシュは世界で貧しい国の一つだから、ご飯が食べられない人たちが多いんだろうな、と考えていた。でも実際は食べ物はあった。10円で日本の3倍くらいの量の豆のカレーを食べている。それなのに、多くの人が栄養失調になっている」

 

出雲氏はバングラデシュの子どもの写真を見せながら、「栄養失調では、足が非常に細くなって、おなかが非常にふくらんで出っ張る。なんでだと思う?」とスカラー候補生に質問しました。

 

スカラー候補生たちからは「筋肉ができないから」「おなかも腹筋ができなくて、その結果、内臓が支えられずにおなかが出ちゃう」などと回答が出てきました。

 

出雲氏は「これまで同じことを何万人もの人に話してきて、腹筋の話が出たのは初めてだね」と驚きながら、その理由について説明をしました。そして、こう続けました。

 

「足りないのは栄養素じゃないか、と気づいた。すごく小さくて、できるだけ多くの栄養素が入っている、栄養素が豊富な食べ物を作れば、栄養失調の問題をなくすことができる。そういうものを探しているときの、大学三年生のときにミドリムシに出合った。それからは人生、ミドリムシ一色になった。」

 

そして、出雲氏は2000年にミドリムシの研究を始め、2005年、仲間と3人で、ミドリムシを広めるための会社を作りました。

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「ミドリムシはけっこういいところがあるわけ。栄養価が高く、二酸化炭素は減って、バイオ燃料を作れるし。でも、10年前は誰も話を聞いてくれなかった。一番大変だったのは、2年間で500社に今と同じ説明をしたけど、一人も買ってくれなかったこと。成功した事例がない、と言われた。500社に言っても使ってもらえないってことは、やっぱりミドリムシはダメなのかな、と悩んでいた。そういうとき、みんなならどうする?」

 

「自分で試してみる」「友達からゆっくり広めてみる」「無料にする」「その人の目の前で一回証明してみる」「有名な人に直接お願いしてテレビに出す」…次々とスカラー候補生からアイデアが出てきます。それでも、出雲氏は質問をやめません。「どうする?」

 

そのうち、スカラー候補生からは「尾つけて語っちゃう」「ミドリムシが入っていませんよ、といって飲ませる」などの意見も出てきて、出雲氏は「だんだんせこくなってきたなぁ」と笑いました。そこに、「相手の好きなことと関連付けて、わかってもらう」とスカラー候補生が言いました。

 

出雲氏は、「素晴らしいね」と言って、質問をやめました。

 

「今の僕だったら、相手との共通点を探してみると思う。でも当時の僕はできなかった。それでも、ミドリムシのことを諦めきれなかった。ミドリムシをいいと言ってくれる人に会うまで頑張ってみよう、と思った。そして2008年5月に、501社目で、やっと一緒に頑張りましょう、という会社に出合った」

 

「500社に認められなくて、ダメだと思うことはなかったんですか?」スカラー候補生が真剣な表情で訊きました。

 

「毎日ダメだ、と思っていたよ。どうしたらミドリムシの良さが伝わるか、と毎日悩んでいました。でもね、一回寝て、次の日朝起きたら、リセット!」

 

会場は笑いの渦に。

 

「本人にとっては、100回やってダメだった、とかクヨクヨするかもしれないけど、そんなのね、他の人や地球全体の話題としたら、全然大した話題じゃないわけ。寝て起きたら、次の日からもう一回ゼロの気持ちで、ぜひご自身の夢を追いかけてほしいと思います」

 

そして出雲氏は、スカラー候補生を見渡しながらこう言いました。

 

私がみなさんくらいのときには、これをやりたいというテーマは特にありませんでした。でも、大学生のときにミドリムシとの出合いがあった。みなさんも、今はなくても、これを使って他の人にびっくりしてほしい、喜んでほしい、楽しんでほしい、というものが絶対に見つかります。そのときに、一つだけ思い出してほしいなぁ。

 

自分の仕事として「これがいい」と思ったものを広めるためには、お金持ちか貧乏かはなんの関係もないのね。一番大事なのは、適切な科学技術と試行回数。同じことを何回も繰り返し勉強して、練習して、研究する力なの。

 

1回やったらうまくいく可能性が1%、失敗する可能性が99%のものは、459回やれば成功する可能性が99%になる。ほとんどの人は459回も繰り返さない。繰り返さずに、周りが間違っているといろんな人が言いますよ。でも、素晴らしい結果を残す人たちはすべからくみんな、大変な努力をしている。

 

今、バングラデシュの小学校で、約6,000人の子どもたちが毎日ミドリムシの給食を食べています。この子どもたちが全員、栄養失調がなくなって、元気に一生懸命勉強するようになったら、バングラデシュで一番成績の優秀な小学校になるんじゃないかな。その子たちが大人になってどんな活躍をしてくれるのか、本当に楽しみです。そして、将来はミドリムシの給食をバングラデシュの子どもたち全員に広めていきましょう、とバングラデシュの首相と約束をしました。

 

ミドリムシで飛行機の燃料を作る、バングラデシュの子どもたちに元気になってもらう。一人じゃできないんだけれど、たくさんの人に支えてもらって、実現していきたいと思っています。

 

それまでスカラー候補生の声が響いていた講義室は、気がつけば静まり返り、出雲氏の話にみんなが引き込まれていました。

 

自分の好きなことに情熱を傾けているスカラー候補生たち。今も、これからも、自分の好きなことを周囲から評価されずに思い悩むことが度々あるかもしれません。そんな時、諦めずに努力を重ねていく勇気を出雲氏からもらったのではないでしょうか。

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