TTTop Runner Talk
2016.07.12

スカラー候補生 定例プログラム

宇宙飛行士になる勉強法
山崎直子(宇宙飛行士)

山崎氏は2010年4月に国際宇宙ステーション ソユーズで15日間の滞在を終えて帰還されました。山崎氏は「ROCKETというプロジェクト名を聞いて、絶対に行かなきゃ!と思ってきました」と笑顔で語り始めました。

 

山崎氏は元々、JAXAのエンジニア。宇宙飛行士の試験に挑戦し、2回目の挑戦で訓練生に選抜されました。しかしその後、宇宙へ飛び立つまではトントン拍子にはいかなかったそうです。訓練に入るまで1年待ち、妊娠・出産・育児で中断。復帰後、訓練再開をしようというタイミングで、2003年、スペースシャトルが事故を起こしました。一緒に訓練していた人が乗っていたため、大きな悲しみを味わい、スペースシャトルもいつ飛べるかわからなくなってしまいました。

 

「目隠しをしながらマラソンをしている感じでした」

 

山崎氏は当時を振り返ります。

 

それでも、いつかは宇宙に行けるといいな、と考えながら訓練を続けて、11年目。ようやく宇宙へ行けることになりました。「下積みは長かったけど、飛んでしまえばあっという間でした」と山崎氏は爽快な笑顔を見せます。

 

国際宇宙ステーションは飛行機の高さのだいたい40倍の位置にあるそうです。距離にすれば地球から400km。東京ー大阪間よりも近くにあります。山崎氏は宇宙へ行った時の印象をこう語りました。

 

無重力は楽しいですよ。ちょっと懐かしい感じがしました。そういえば、(地球という星に生命が生まれたように)私たちも元は宇宙からできているんですよね。宇宙へは冒険で行くようなイメージがあったんですが、故郷を訪ねていくような感じなのかな。

 

そして、国際宇宙ステーションでの暮らしについて説明されました。

 

宇宙ステーションは90分で地球を一周するため、1日に16回、日の出を見ること。夜は地球が真っ暗で見えないのに、光で日本列島がわかること。オーロラが地軸上で丸く見えること、等。山崎氏は台風の目が海上を実際に動く姿を見て、「地球そのものが生きているんだなぁという感じがしました」と語りました。

 

「未知のところがいいとかあると思いますが、それ以外に宇宙の良さってありますか?」

 

スカラー候補生が質問しました。山崎氏はこう答えます。

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価値観がガラっと変わりますね。宇宙は上も下もない世界です。狭い机でも一人が上で作業して、一人が裏面で作業ができる。四畳半のスペースで7人が寝るのにも、壁や天井などが使えるので狭さは感じない。ものの見方が変わってきますよね。地球に戻ってくると、今度は重力が重いので、おぼつかない足取りで外に出るんだけど、風が吹いてきたり、草や木の香りが漂ってきたりする。それがすごくいいな、愛おしいな、と思います。今まで当たり前だと思って気づけなかったことに気づけるんじゃないかと思います。

 

1951年にガガーリンが最初に宇宙に旅立ってから、既に約560人が宇宙へ。しかし、1年間に約10人の割合はこの55年で変わらないそうです。

 

「今は宇宙船を飛ばすのにすごくお金がかかるので、人数を絞らざるをえませんが、今後、もっとたくさんの人が宇宙へ行くようになればと思っています。宇宙へ行く人の割合を変えるのは、民間のロケットであったり、宇宙旅行なんじゃないかな。」

 

山崎氏は続けます。

 

「宇宙では歩かないで済むから、車椅子でも関係ありません。重力に逆らって血液をポンプで運ぶ必要がないから、心臓が弱い人も宇宙へ行ってしまえばより快適に過ごせます。もっといろんな人が宇宙へ行くことで、いろんな文化や文明が成熟するんじゃないかという気がしています。」

 

現在の技術では、火星までは半年かかってしまいますが、月までは3日で到着し、1週間で往復できるそうです。いずれ、月旅行までは行けるんじゃないか、と山崎氏は考えていることを話し、「あと10年、20年したら、丸い地球を宇宙から眺める人も出てくるのかな」と笑顔を見せました。

 

「今、求められている最先端の研究とか、こうなったらいいな、っていうのはありますか?」スカラー候補生が質問しました。山崎氏は返答します。

 

ワープの研究っていうと、ふざけたような感じがしますが、それを大の大人が朝昼晩、一生懸命研究しているんですよね。それをちゃんとNASAがサポートしているんですよ。NASA以外にも色々な大学とか研究機関とかと協力して、一緒にもっと面白い研究をしているところがたくさんある。

 

すぐに結果が出なくても、それがなんらかのことでつながることって絶対出てくるんじゃないかな。昔ね、渡り鳥の研究をしている人がいたんです。何十年も渡り鳥のことなんかやって、って周りからはけっこうバカにされていたんです。でも、ある時ね、SARSという病気が広まって、そのときに渡り鳥の研究が役に立ったんですよね。あの人がやっていたことが実は大切だった、ってことがあるから、いろんな人がいろんな観点から研究できるってすごく大切だと思う。

 

続けざまにスカラー候補生が手を挙げます。「これだけは実現させたいってことはありますか?」

 

「やっぱり宇宙エレベーターとか、宇宙へ行く新しい手段ですね。今のロケットだと打ち上げ費用が高すぎますし、限界があるので。宇宙エレベーターとかレールカーとか、どういう形かわからないけど、もっと日本の人が体に優しい形で宇宙に行けるように、それは実現させたいな、と思いました。」

 

講義時間が終了に近づいても、スカラー候補生たちの質問はなかなか止まりませんでした。山崎氏の語る宇宙や時間軸、考え方から、スカラー候補生たちは興奮や驚き、安らぎなど、それぞれに刺激を受け取ったことでしょう。

 

JAXAの前身である東大先端研から子どもたちを飛び立たせる。ROCKETのミッションはこれからも続きます。

 

 

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