TTTop Runner Talk
2017.06.01

スカラー候補生 定例プログラム

ぼくがセロテープを買ってもらえなかった理由
神原秀夫(デザイナー)

2017年6月のトップランナーはアートディレクターの神原秀夫氏。神原氏はプロダクトのみならず、グラフィックやインテリアなど幅広いデザイン領域で活動を展開しています。ニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art, New York/以下MoMA)の「MoMAデザインコレクション」に選定された消しゴム「カドケシ(コクヨ株式会社)」、異才発掘プロジェクトROCKETや東大先端研の新しいロゴデザインなども神原氏の作品です。

 

「子どもの頃は分解が大好きでした」と神原氏は語ります。

実家が自動車の整備工場をしていたので、父親の仕事を間近に見て、真似るように電気製品やおもちゃを分解していたそうです。

 

「小学生低学年のときは手順を考えずに分解して、元に戻せなくて怒られていました。でもついにはバレないように戻せるようになった。分解すると物の作りが分かるようになりました。」と神原氏は笑います。

 

「それから、子どもの頃、セロハンテープも買ってもらえなかったなぁ」

その理由は、夢中で物を作るうちに、セロハンテープを全部使ってしまうから。家でセロハンテープが禁止になり、さてどうするか。家が整備工場だったので接着剤は沢山ありました。あとは商品の値札のシールをストックしておいて、ここぞという時はそのシールを使っていたそうです。

 

スカラー候補生から、「物作りの中から、どうしてプロダクトデザインを選んだんですか?」と質問が挙がりました。神原氏は次のように答えました。

 

実家が自動車の整備工場だったので、昔は車のデザインをやりたかったんですが、あまりにも身近すぎて距離を置いてしまいました。プロダクトを選んだのは、家電が大好きだったのもあるかもですね。

他のスカラー候補生も続きます。

 

「100年残るデザインは、どうやったら作れるんですか?」

100年後に見て、古いなって思われないことかな。今こういう表現が流行っているのでやろうとすると、何十年後かには古くなる。小手先でデザインしないようにしています。

 

良いデザインっていうのはなんだろう?一つは、言葉で伝えられるデザイン。もう一つは、普通の人が絵に描けるような、複雑な説明がなくても、ひと目でどういう物なのかが分かるもの。

 

先端研の新しいロゴには、13号館の時計台をモチーフとしたロゴマークがついています。先端研に来ると、まず13号館が目に入る。つまり、印象に残るんです。 そして、風格もある。さらに、13号館は国の登録有形文化財に指定されているので、恐らく今後壊されることはない。ロゴマークを見て、これは何かと思われることはない。

 

スカラー候補生は次々と質問を続けます。それらに対して、神原氏は少し間を置きながら、淡々と、簡潔に返答していきます。

 

そして、神原氏は穏やかに、子どもたちに以下のように語りました。

 

今、名前のない職業がどんどん増えています。みんなが大人になる頃は、きっともっと増えているんじゃないかな。既存の職業の枠を気にせず、自分で名乗ってしまう位でいいと思います。そのためにも、ぜひ相手を説得する能力を身につけてください。

 

今回、参加者の1/4程度の子どもたちが、デザインに関連したことがしたい、と手を挙げました。子どもたちはこれから、どのような職業を名乗り、どのような未来をデザインするのでしょうか。セロハンテープを買ってもらえなかったかつての少年から手渡されたメッセージが、スカラーたちの今後のデザインにどのように反映されてくるのか、楽しみです。

 

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