2017年9月のトップランナーは書道家の武田双雲 氏。武田氏はスーパーコンピュータ「京」や世界遺産「平泉」のロゴデザインを手掛けるなど、日本を代表する書道家です。また、他分野のクリエーターとのコラボレーションなども積極的に行い、書道家の枠を超えて活躍しています。
「母ちゃんが書道の先生で、小さいときからすごい練習していたから、細かいところまで線が見える子どもだったわけ。」
いきなり、高いトーンの早口で武田氏は語り出しました。
「学校で、1+1=2と黒板に先生が書いていて、真ん中の2本の線はなんですか?って質問すると、左と右は同じっていう記号だ、って先生は言う。でも、左はこんな直線ばっかりなのに、右は白鳥みたいな形で丸みがある。それなのに、一緒ってどういうことですか?って先生に訊いて、面倒くさがられる子どもだった。先生は答えてくれないから、父ちゃん母ちゃんに訊くと、二人とも『気づかなかった、天才だわ』と言ってるだけで答えてくれない(笑)」
会場は爆笑。武田氏の舌は益々回転を速めます。
「何事も普通にできないのね。同じことを繰り返すのが自分はダメだから、歯磨きもその日によって、ちょっと小指を立ててみたりね。え?やらない?」
「やらない!」「やるー!」
スカラー候補生たちは大きな声で答えます。
会社に入ってからも、「この会議に何の意味があるんですか?」と何度も訊いて、「お前、この会社に合わない」と何度も言われたのよ。
でもね、僕らみたいに、常識では障害者とか邪魔とか変と言われているような人は、実は一期一会を感じるのが得意なんですよ。なぜなら、普通は常識とかあるし、時間軸の過去と未来がつながっているでしょ。でも、僕みたいな他動的な子はホルモン異常で過去と未来がつながらないみたいです。過去の記憶が吹っ飛ぶようです。だから僕は今でも妻のことが新妻に見えることがある(笑)。
スカラー候補生たちはすっかりリラックス。武田氏に向かって、思ったことを口に出して笑っています。武田氏はいたずらっぽい表情を浮かべてスカラー候補生たちに返し、その度に会場は爆笑の渦に。
「人間社会は行き詰りました。豊かになったのに、みんな疲れ切って道が見えなくなっている。企業はクリエーターやアイディアマンを求めています。おめでとうございます、やっと僕らの時代がきた。」
武田氏はスカラー候補生たちの顔をおおらかな笑顔で見渡しました。
「でもね、自分は変なまま、向こう側の常識と共感・共振・共鳴を起こさないと意味がない。共振できないと、変な人はただのノイズでしかない訳。でも、ギターやピアノみたいに、ちょっと向こうの常識にチューニングできれば、変態が天才になれる。」
そして、チューニングのコツをスカラー候補生たちに伝授しました。
変なままでいい。自分たちの時代がきた。目の前で生き生きと語る武田氏を見て、スカラー候補生たちの目には自信が宿っているようでした。武田氏のメッセージを胸に、スカラー候補生たちがどのような「道」を切り拓いていくのか、これからが楽しみです。