TTTop Runner Talk
2017.12.12

スカラー候補生 定例プログラム

無意識の世界 -認知科学の視点から-
渡邉克巳(早稲田大学教授 認知心理学者)

2017年12月のトップランナートークは日本の認知心理学研究の第一人者、渡邉克巳さんの「無意識の世界 -認知科学の視点から-」です。渡邉さんは、認知科学・心理学・脳神経科学等の最先端の方法を使って、心を作り出している意識的・無意識的過程の科学的解明を目指す研究をされています。

「特化した才能があるユニークな子どもの中にできないことがあるのは、普通の人と見え方が違うからではないか?そして、それらは無意識の中で起っています。」

 

渡辺さんはそう言って日常の意識されない無意識に目を向けるような実験事例を示しながら、無意識と意識について子どもたちの気づきを促します。

 

渡邉さんは実体験として会場の人達が体感できるように、認知実験を開始しました。ある実験では、一つの画面の中に人の顔がいくつあるかを見つけるため、騙し絵のような映像が用意されました。最初はどこに顔があるのか無意識化で処理しているため気づきませんが、一旦、顔を見つけて意識化すると他の見方をすることが難しくなります。

 

渡邉さんは、こう続けます。

「知識は、見える世界を変えます。一度体験すると見方を大きく変えてしまい、その前には戻れないのです。このときの「見えなかった自分」というのを大切にしてほしいのです。」

他にも、左回りに見える体験と右回りに見える体験は同時に成り立たないことを示す実験や、2つのことが同時に見えない実験、2本の動画の間違い探しなどを次々に行い、子どもたちは意識を向ける限界を体感したようでした

渡邉さんは、子ども達に問いかけます。

「あるものを見て、大多数の人が「青」に見えるといった場合、「青」に見えない人がいたとします。果たしてその人を責めることはできるでしょうか。人によって見え方は違う場合もあるのです。」人によって見ているものが同じではない可能性を前提に物事を組み立てる必要があるというメッセージを渡邊さんの実験は示していたように感じました。

 

次に、主観に関する話題へと論点が移ります。

「さて、自分の気持ちに目を向けてみましょう、自分の気持ちは自分でどれくらい理解していると思いますか?」

 

悲しいという気持ちはどこからくるのでしょうか。

悲しいから泣くのか、泣いている自分を脳が解釈して悲しむのか。被験者が音読した短い話を、悲しい気持ちになる声に加工して再度聞くと、だんだん悲しくなってきます。悲しみだけではなく、楽しい、怖がっている音に加工した時も、それぞれの感情を変化させることができるのです。

 

渡邉さんは、心理学を研究していく中で、人の気持ちを探っていくと、何が好きかではなく、人がどうして好きになるのかということにも興味を持ちました。

 

人を好きになる気持ちは、新奇性(目新しい様)か親近性のどちらからくるのでしょうか。

ここでもう一度ある音楽を流しながら、その背景にある映像を毎回変えていくという実験をしてみます。すると、映像は新しいけれど、どこかで音楽を聞いたことがあるから好き」といったように、好きという気持ちは、新奇性と親近性の両方を備えているのではないかと、子ども達は気付きます。

 

会場からは脳と心の関係や、無意識なのにどのように意識するのかなどの質問が飛び交い、参加者は目に見えない世界に人の心がどう成立しているのかという普遍的な問いへと興味を広げていたようでした。

 

普段見ている世界がどう見えているのかを立ち止まって考えさせてくれる渡邊さんの話は、見ている世界を真新しく捉え直す機会を子どもたちに与えてくださったように思います。

 

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