TTTop Runner Talk
2018.03.02

スカラー候補生 定例プログラム

なぜニューヨークでピアノを弾いているのか〜私を変えた3つの出来事〜
西川悟平(ピアニスト)

2018年3月のトップランナー講義は7本指のピアニスト西川悟平さんによる『なぜニューヨークでピアノを弾いているのか』。ドラえもんののび太のように叱られてばっかりだった小学生時代を過ごした西川悟平さんが、初めてピアノを習い始めたのは16歳。周囲の人たちからは「いまさら遅すぎる」言われました。ところが、その後、才能が見事に開花し、ニューヨークに渡りますが、2004年、病気のために両手あわせて七本の指しか動かくなりました。西川さんはそれでもピアノをあきらめることなく、ニューヨークでピアノを弾いているのはなぜなのか?日本財団のビル1階にてピアノの前でお話いただきます。

 

 

西川さんの話はニューヨークで泥棒にあったことから始まります。「2年前の冬、ニューヨークで強盗にあったのです。クレジットカードやパソコンとなどを盗まれました」今、思い出しても身がすくむように、その恐怖体験をありありと再現しました。西川さんは泥棒に注射器で脅かされ、殺されるという恐怖で震えが止まりません。そんな状態の中、自分はどんな人に殺されるのか、知っておきたいという感情が沸き上がりました。

 

そのころ、西川さんは心理学・幼児教育に携わっていたため、泥棒が『どういう幼児時代をすごすと泥棒になるのか』に興味を抱いたのです。泥棒は4歳からいじめられ、悲痛な過去を告白しました。すると、その話を聞いて西川さんは、涙を流しながら、泥棒に近づきました。

 

「ハグしていい?」

西川さんと泥棒は抱き合いました。

 

その後、西川氏は泥棒に緑茶をサービスしてこれまでの人生のあれこれを話しました。気がつけば8時間もたっていました。泥棒が部屋を出て行く時、泥棒が西川さんに言いました。

 

「前向きにがんばれよ」

その言葉を聞いた西川さんは約束しました。

 

「カーネギーの大ホールでコンサートを開くことが僕の夢。もし夢が叶ったら必ず招待する」

 

西川さんの夢が叶ったとき、ポスターを見た泥棒から連絡がありました。怖くなった西川さんはカーネギーホールの支配人にその話をすると、招待するべきだと泥棒に連絡したのです。

 

コンサートの当日、会場に現れたのは、社会人として成功した立派な紳士でした。信じられませんが実話です。

続いて、西川さんはどんな人にもチャンスは必ずあり、信じていれば夢は叶うことを熱い思いとともに語ります。

 

アメリカでは日本では得られない経験もあります。映画『ゴーストバスターズ』になんと西川さんの家が写っていたのです。これは縁で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマイケル・J・フォックスからパーティに招待され、ハリウッドの映画界の人たちとも仲良くなりました。また、西川さんの活躍が認められ、パナソニックのCMにも起用されました。

 

夢を追求し続け、想像し続けた西川さん。どこの大学に行くかということが最終目的ではなく、大学よりも、もっと上の階層がある、ありえない体験が待っていると感じています。常識でじぶんの可能性にリミットをかけないでやり続けることを実践した結果、チャンスは必ずやってくるのです。

 

西川さんがこの日、ROCKETの子どもたちの前で演奏するのは、「冬・ウインター」です。うつ病で自ら命を絶った18歳の少年、リアム・ピッカーが遺した曲です。その曲を初めて知ったとき、彼の苦しみや優しさが伝わってきて、どうしてもその気持ちに忠実に表現したいと思い、西川さんは彼が自殺した場所を訪ねました。そこには、彼の深い悲しみがたたずんでいました。彼の思いを感じたとき、その人の気持ちを考えてどれだけ表現できるかが、いかに大切かということを思い知らされます。彼は死んでしまったけれど、彼の大好きだった日本で、西川さんが演奏することにより、彼の魂は日本を駆け巡っています。その音色は会場を包み込み、そこにいる全ての人の心に染み渡ります。

 

最後に「なぜ、西川さんはピアノを弾いているのか?」ということを語ります。

 

「表現するとは生きていること。もしピアノを弾けなければ、自分が何かわからくなってしまい、自分の表現の方法を失うことになる。それが見つかって嬉しい。病気で指が七本しか動かなくなっても、ピアノを続けたのは、ただ好きだったから。無理だって言われたけれど、好きだという思いは消えなかった。好きなことをやり続けてほしい」

スカラー候補生からは「音大に行ってよかったことは?」、「英語の勉強方法は?」、「出番の前に緊張するけどどうすればいい?」、「ネガティブになったことはある?」「東京とニューヨーク、どっちが好き?」など次から次へと質問が止まりません。

 

最後にピアノを弾きたいと自作の曲を演奏したスカラー候補生。

ピアノの前に座りますが、緊張しているのかなかなか鍵盤にふれることができません。そっと音を奏で始めると、緊張していたのではなく、この場に響かせる音が天から降りてくるのを待っていたのだと気づきました。ピアノの音色は西川さんのお話の余韻を心に響かせてくれました。

 

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