TTTop Runner Talk
2019.03.31

全国説明会 in 神戸

最先端の研究はルールを壊す
高橋政代(眼科医・理化学研究所・網膜再生医療研究開発プロジェクトリーダー)

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2019年3月31日、2019年度全国説明会in神戸で開催されたトップランナートークには、眼科医でもあり網膜の再生医療の第一人者でもある高橋政代さんをお迎えします。


「iPS細胞の研究をはじめたころは、偉い先生方も含め世界中から、危険だ、やめた方がいい、という声を頂くこともありました。それを突破していくためには、ルールに従っているだけではできませんでした。」高橋さんの講義はこんなお話からはじまりました。

右から三宅琢さん(iPadを処方する眼科医)、高橋政代さん、中邑賢龍(ROCKETディレクター)、福本理恵(ROCKETプロジェクトリーダー)

 

「なにかの分野で先頭に近いところにいると、流れ、新しい風というものを感じて、これから社会が、本当に変わっていくということを実感しています。これから子どもたちが生きていく社会は、これまでと全く異なるルールで進んでいく。」高橋さんはくり返し伝えます。

 

「社会を大きく変えていく要因のひとつとしてAIがありますね。医療の現場にすでにAIは入ってきています。50種の目の病気に関しては、すでに研修医などの経験のないドクターよりも、AIの方がより正確に判別できるようになっています。」と眼底検査の写真を見せながら説明しました。


ではそんな中で、人間のドクターに求められるものは何でしょう?
高橋さんはそれを「創造性と、人間性」だと言います。

 

このことを実現するために、高橋さんはネクストビジョンというプロジェクトを立ち上げました。患者さんのケア、社会への啓蒙を目的として、検診会社やベンチャー企業も巻き込んだプラットフォームを形成しています。そこでは視覚障害というものが、一般的なイメージとは異なりポジティブな捉え方をされているようです。

「視覚障害といっても、いろいろな人たちがいます。見えない人たちも、みんなそんなに悲惨な状態になっているわけではありません。工夫をして楽しく暮らしている人も、目が見えないことを活かして仕事をしている人もいます。 目の病気になると、すごく目を守ろうとする人がいます。子どもの目に陽の光が悪いかもしれないと知ったら、子どもを外に出さないようにする人がいますが、これは困ったことです。目が見える、見えないに関わらず、大切なのは“生活を楽しむ”ことです」と高橋さんは言います。

 

「病気の進行を6ヶ月遅らせるために、20年何もしないのではよくない。どんな風に暮らしていくかを考え、工夫しながら、なにより楽しく生活することが大切なのです。」

 

「過去・現在・未来へとルールに沿って考えると、ルールが無いものはできないと思って止まってしまう。未来から逆算して考えるなら、ルールをつくってしまえばいい。行き当たりバッチリの時代です。」
高橋さんがそう話すと、会場からは暖かい笑い声がもれます。

 

「私たちは100年後の社会を考えて活動しています。患者の皮膚から網膜の細胞をつくれるiPS細胞の研究では、これまでにもルール破りがたくさんありました。 人間と協業できるAIは、医療やバイオロジーを根本から変えていくことになります。」

 

子どもたちはまさにその渦中の中を生き抜いていくことになるでしょう。高橋さんの語る未来は、新たな価値観のわくわくに満ちています。テクノロジーや新しい社会の仕組みによって、病気や障がいに対する認識も、ますます変わっていくはずです。

「ライターやストローも、手を怪我した人が発明したものなんですよ。社会は、自分が健常だと思っている人を中心に回っているから、いろいろ不具合が起きるのです。」

 

既定路線で考えると生まれてこないアイディアも、視点を変えたところにヒントがあります。ヒントから得たアイディアを形にするためには、ルールを塗り替えるチャレンジが続いていく。最先端の研究はまさにその繰り返しなのだと感じました。「信念を実現するために、自分自身がルールを作っていくんだ」という高橋さんの言葉は実現してきた自信と確信に満ちていました。

 

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